最近の母は、テレビや週刊誌を見なくなりました。皇室ネタと瀬戸内寂聴さんが好きで、週刊誌を何度も読み返していたのですが最近は、買っていった雑誌を開く様子もありません。手帳の予定表なども、去年あたりから付けなくなりました。実家に帰ると、「谷野さんは、86歳になりました。」と、ティッシュの箱に書いてあります。往診に来て下さる、医師がいつも書いてくれるそうです。先生がいなかったらこんなに長生きできなかったと、いつも言っています。
その先生も85歳になられるそうで、自分で車を運転して往診してくださる、とても元気な先生です。
最近は、よく家の中で転んでしまう様で、先日も転んでしまい、虫の知らせかのように、家に来た義兄に助けてもらったと。「おまえも、義兄のおかあさんが亡くなったらお葬式に行かなくちゃね。」と、少しズレてるような気がしますが、義兄もまた母のヒーローになっているようです。
よく留守電には母の伝言が入っています。だいたい3件、同じ口調で「もしもし、おかあちゃんだけど、いつ来るんだ。」さだまさしの案山子のような台詞ですが、そんな歌のように健気ではありません。正月すぎに帰ったばかりなのに、もうこの電話です。先日も帰り際に「おかあちゃん目当てに帰って来れるように、まだまだ元気でいるから。」と、微妙に意味合いが違うような気もしますが、確かに母がいなかったら、法事くらいでしか田舎に帰ることはなくなるでしょう。電話で話をしていると「今日は元気がないね。」と、いつも元気ないけど、なぜかいつも当たっています。
この歳になってようやく、着信履歴を埋め尽くす母の名を見て、元気なんだなと思えるようになりました。
お寺のよこで働かせていただき半年になりました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。