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【お寺のよこのマジカルな日】 お寺のよこ 橋本

2011年02月05日 | お寺のよこ

空気が冷たい季節です。気温が低い日が続いていますが、皆さんはお風邪などひかれておりませんか。
お寺のよこでは少し前に風邪が流行して、利用者さん職員とも鼻水を垂らしながら生活をしておりました。現在は、ほぼ緩和されていますが、まだ鼻をぐずぐずさせている利用者さんもおります。
普段は、散歩や買い物などに出かける事を、日常の生活の中でメインの活動にしていますが、このように体調不良者が多い時は、最小限の食材の買い物のみを行い、レモネードや甘酒を飲んで身体を温めながら、体調の回復を心掛けて、ゆっくりと屋内で過ごされています。
そのようなある日の事。物静かなS男さん(風邪をひかれていない数少ない方の一人)に昼食の買い物のお誘いをして一緒に玄関に出たところ、突然その場でランニングの足踏みをされている。「走っていきますか?」と尋ねると、笑顔で頷かれ、そのまま近所のスーパーまでランニング。歩行さえもやや不安定な時がある方なので、一緒に走りつつ私の内なる声は「転ばないで。お願いだから転ばないでね」と、極力ゆっくりと走れるように伴走を行いました。
自ら何かをやりたいといわれる事は殆ど無いので、この時にS男さんの意思表現を見る事ができ、そして一緒に走る機会が持てて嬉しかったです。転倒しないかとドキドキしながらではありましたが。
そして同じ日の事。今度はY子さんの話です。食事中に動き出す事がまったくない方ですが、突然立ち上がって歩き始める。何年か前には見られた尿意による立ち上がりと同じ様子に見えました。そこでトイレに行くと、スカートを捲り上げようとされている。上手には出来ない為にお手伝いし、座って貰うと直ぐに排尿がありました。自ら尿意を、素振りででも知らせる事はもう出来なくなったと思っていたのに、びっくりです。素振りはこの時1回のみでありましたが、普段訴えとして現れなくても、実はまだ尿意が潜んでいるのかもしれません。
またまた同じ日の事。外出欲求のあるT子さん。普段は一人で外に行かれようとするのに、S男さんを「行きましょう」と誘って玄関へ。「この靴履きなさいよ」と他の利用者さんの靴を勧めているが、S男さんは我関せずと玄関の鍵を締めてしまう。お寺のよこでは、個々の性格によるものや認知症の重度化により利用者同士の関わりが少ないのが現状です。この時はそれ以上に関係が発展しなかったとはいえ、利用者さん自らが関係を取ろうとした事が嬉しく感じました。
当日、一緒の勤務だった職員に「今日は、いろいろ驚く事があったね」と言うと、「きっと夜間にでも利用者が密かに集まって職員を驚かせてしまおうという相談をしてたかも」などと冗談が返ってきました。
職員が意図する支援とは別のところで、利用者さん自らの動きが見られた事が、同じ日に続いてしまったのが何だったのかは、実際のところ判りませんが、風邪症状の利用者が多いとはいえ、高熱を出している方もなく、職員も利用者さんもゆったりとしたペースで過ごす事ができていた為かもしれません。職員など居なくとも雰囲気さえ整えば、利用者の力は発揮できるのかもしれないと感じた1日でありました。
こうして認知症の方と関わる仕事をしていると、このように普段とは違った姿を見せてくれる事が、時々あります。その出会いが嬉しくて、楽しくて面白い。この仕事をやっていて良かったと思う瞬間ですね。底知れぬパワーを見せてくださるご老人達に感謝します。

10:13 | Posted by admin