新人スタッフに仕事を教えていた時のお話です。
その日は、入居者Oさんに入浴して頂きたいと思い、新人スタッフに声掛けをお願いしました。
新人スタッフ「Oさん、お風呂が沸きましたよ。良かったらどうぞ」
Oさんはリビングの椅子に座って、テーブルに置いてある花を愛でながら、「はいよ、ありがとう」と、気の向かない返事をしています。
さて、迷い所です。趣味活動に没頭する事はとても大事に思いますが、清潔も保って頂きたい。どちらを優先させるかの考え時です。
しかし、入浴期間が空いてしまっているため、何とか入浴して頂きたいと思っていました。
そんな思いがある事を新人スタッフに伝えて、一旦、その場を離れようと、他の入居者さんの部屋で、ケアの手順などの話をしていました。
数分後、リビングに出てみると、先程と少し状況が変わっていたので、その事を新人スタッフに説明しました。
「さっきと変わった所分かる?花がテーブル上に置いてないでしょう。多分、志寒さんも同じ事を考えていて、Oさんにお風呂に入って欲しいと思い、Oさんから花を遠ざけたんじゃないかな。これは、チームケアって言って、ある入居者さんに対して、スタッフ同士のケアの方向がブレていないから出来る事なんですよ。また、スタッフ同士がお互い言葉を交わさなくても、それが出来るのはチームワークが出来ているって事なんですよ。」
時は夕方、チーフの志寒さんは、他の入居者さん達と、キッチンやリビングで夕食作りをしていましたので、私と新人スタッフ、Oさんとのやり取りを聞いていて、助け舟を出してくれたのだろうと説明しました。
さあ、今だ。「もう一度、入浴の声掛けをしてみて下さい」
その時です。
「Oさん、水入れ替えたからね」と言いながら、入居者Kさんが花の生けてある花瓶を、先程と同じ所に置いたのです。
Oさん「いや~、ありがと、ありがと」
惜しいひ私「声掛け、もう少し待ってみましょうか」
Oさんの前から花を遠ざけたのは、世話好きの入居者Kさんでした。
後で志寒さんと話をした時、同じ様な事をしようと思っていたが、Kさんの方が早かったと
言っていました。
もしかしたら、Kさんもチームの一員になれるかも知れませんね。