心と体は密接に関係している。良く言われている事ですが、最近この言葉を実感する出来事がありました。
私の担当するTさんは以前はとにかく外に出たがらない方でした。口癖は「めんどくさい、腰が痛い。」或いは「やってください。お願いします。」です。そんなTさんの一日は居間でTVを眺める毎日。好物の甘い物で外出意欲を高めてもらおうと「おやつ一緒に買いに行きませんか。」などと誘ってみますが、それもその内に「めんどくさい、腰が痛い。」と外出する動機にはならなくなってきました。
そんな折、運営推進会議でご家族とお話する機会があり、以前Tさんが買い物に出掛けた時に他の入居者さんが使っていたシルバーカーを見て「私も昔はあれ使ってた。」と仰っていた事を思い出しました。そこでご家族に確認すると、今でもご自宅に使っていたシルバーカーが残っているという事なのでお持ち頂くことに。正直、「これで少しは歩行時の腰の痛みが和らいでくれればな。」程度に考えていました。
さて、ご家族からシルバーカーが届きました。早速、試運転がてら昼食を買いに一緒に外へ…。
嗚呼、素晴らしき哉シルバーカー。歩行時の姿勢、安定性、持続可能時間、全てにおいて改善が見られます。Tさんもシルバーカーの操作感は覚えていらしたようで、道の段差もハンドルを捻るように動かし前輪を浮かして難なく進みます。うーん、これは凄い。果たして、今のTさんはどこまで行けるのか。
ある日、白山下の天丼屋までお昼を食べに行くことになりました。この天丼屋、今までの日常生活圏の5倍ほど距離が離れています。途中で休憩を挟みながらと思いきや、Tさん「だいじょうぶ。」「平気。」、結局一度も休憩で座る事無く往復の道のりを踏破したのです。あの時は、私の方が「これ本当に大丈夫なんだろうか。」と不安に駆られたほどです。
シルバーカーを手に入れ無敵になったTさん。ここで話はタイトルに戻ります。
外出機会と活動量の増えたTさん、その変化が身体以外の部分にも現れだしました。
他の入居者さんの世話を焼いたり、テーブルに残っている食器を片したり、さらには片した食器を洗い出したり。元々、きれい好きな方ではありましたが、職員が何を言うわけでもなく、自発的にこういった行動をする事が多く見られるようになったのです。身体を動かすことで生活に張りとやる気が出る事に繋がっているのではないでしょうか。
シルバーカーがあればどこにだって行けるようになったTさん、これからどんな所へ行き、どんな生活を送られるのか、これからが楽しみで仕方ありません。