特にすることもなく、ぼんやりとリビングに座っているOさんに「犬も歩けば、、、?」と言って、マイクを突き出す真似をしてみました。
するとOさん、少し考えて「棒に当たるぅ!」と、私の右手に握った架空のマイクに向かって答えて下さいました。
「素晴らしいですね、正解です」と言うと、「良かったぁ」と嬉しそうです。
「それでは、猿も木から、、、?」と架空のマイクを口元に向けると「落ちる!」と、即答しました。
「では、次は、弘法も、、、?」と、マイクを突き出すと、「弘法?う~ん、弘法」と悩んでいます。
それを隣で見ていたAさんが、「おばあちゃん、これだよ」と言って、テーブルに何かを書く素振りをして、その手に持った架空の筆を指差して「これこれ」と言っています。
Oさんには、その、これ、が分からず「弘法も、、、何だ?」と考えているので、痺れを切らしたAさんは「筆だよ、筆の誤り、だよ」と、声に出して教えてしまいました。
それを聞いたOさんは「筆の誤りだぁ」と私に向かって答えました。
「じゃあ、豚に?」とOさんにマイクを向けると、「おばあちゃん、これだよ」と、首元に指で線を描きながら「真珠だよ」と、AさんがOさんに教えています。
Oさんは「真珠かぁ」と、少し表情が曇ります。
「じゃあ、これはどうかな?猫に?」
両手の親指と人差し指を楕円形に合わせて「おばあちゃん、これだよ」とAさん。
それを見たOさんは元気な声で「牡丹餅だぁ」と。
それを聞いたAさんは大笑い。
Oさんは、どうしたのという表情をしていますので、間髪入れずに「じゃあ、棚から?」と聞いてみると「牡丹餅!」と嬉しそうに答えた後「あれ?なんだ??可笑しいな」と、猫には牡丹餅では無かった事に気付き「そうかぁ、牡丹餅は棚からかぁ」とOさんは照れて、皆は笑いました。
そして、私は思うのです。
Oさんの間違いは、Aさんのヒントが牡丹餅に見えたからではないかと。それは、お昼前の時間帯であったこともあり、空腹感が牡丹餅を連想させたからではないかと。
しかし、空腹だったからといって、どうして『牡丹餅』という言葉が出てきたのでしょうか?Aさんの作った楕円形のヒントから想像できる食べ物は他にもある筈です。
卵、コロッケ、ハンバーグ、、、、、。
諺の問題をやっているという認識があり、諺の中で使用されている楕円形の食べ物という検索結果で『牡丹餅』という言葉が出てきたのでしょうか。
正解は、Oさんにしか、いや、Oさんにも、誰にも分からない事でしょう。
『猫に牡丹餅』。
その笑いを切っ掛けに、皆さんでお昼ご飯の準備に取り掛かる事になりました。
牡丹餅は棚から落ちてきませんからね。