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【心と身をすくめた一年】  きみさんち 志寒

2021年03月10日 | きみさんち

この記事を2月に書いていますが、昨年の2月は初旬にダイヤモンドプリンセス号の新コロナウイルス感染者が話題となり、中頃には中国の武漢市から在中邦人がチャーター機で帰国していました。何かが起こっているぞという感覚はあっても、まだまだ対岸の火事のように感じていた人も多かったのではないでしょうか。2度の緊急事態宣言を体験するという、この現状を想像できた人は少なかったに違いありません。この一年はまさしくコロナ禍で塗りつぶされたと言っても過言ではないでしょう。
きみさんちでは日々の買い物を職員が代行し、入居者さんの外出を大幅に自粛しています。しかし、感染予防対策を行った上で、外のベンチでの日向ぼっこや感染可能性の少ない公園での散歩などは必ずしも制限していません。ですが、そうした外出さえもほとんど見られません。入居者さんが望まなくなっているのです。あれほど毎日のように外に出ていた方もいらっしゃるのに。
それを知るご近所の方にお会いすると「最近、皆さんはお元気?やっぱり外に出たいでしょうにね。外出はやめてもらってるんでしょ?」とお声を掛けられるのですが、実際は私たちが外出を思いとどまってもらう働きかけをするまでもなく、外出しようとする様子や意欲がほぼ見られないのです。
特段、みなさん自身がニュースや新聞でコロナ禍を知って、自発的に自粛しているわけでもなさそうです。外出しない生活に慣れきってしまったのでしょうか?可能性はありそうです。それも切ないことではありますが、より不安な可能性として、私たち職員が無意識的に入居者さんが外に目を向けないよう、メッセージを出しているのではないかという想像もしてしまいます。
振り返ってみれば、昨年はどれだけ入居者さんと満開の桜の話をしたでしょうか。輝く夏の日差しや色づいた紅葉を何度、話したでしょうか。新しくオープンしたお店の話はしたでしょうか。近所に住み着いた野良猫の話はしたでしょうか。私たち職員のそうした変化に入居者さんが反応しているのかもしれません。この状況で私たち職員が地域に心を閉ざせば、入居者さんも地域から心が離れていってしまうように感じます。たとえ、外出自粛をしていても、心は地域とともにあり続けたいと改めて思うのでした。

16:58 | Posted by kimisanchi