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【桃の花が咲く頃】  きみさんち 松林

2021年05月10日 | きみさんち

春の季節、きみさんちの近所に綺麗な桃の花が咲きます。
この桃の花をバックに、以前入居されていたAさんを写した写真がとても素敵な写真でしたので、この桃の花を見るとAさんを思い出します。
ファイル 554-1.jpegその写真に写ったAさんは、満開の桃の花に負けないくらい、明るい笑顔を見せて下さっていました。
ご家族の都合で2年弱で退去されてしまいましたが、その間のAさんは、沢山の思い出を残して下さいました。そして何より、沢山の事を学ばせて下さいました。
帰宅の思いが消えない方でしたので、毎日、夕方近くになると、バッグを肩に提げて「お世話になりました。それじゃ帰りますね」と、出て行かれます。
ご本人は、泊まりに来ているという認識があっため、当然の行動ですが、どの様に戻って頂くのか、また、どうすれば留まって頂けるのか、考えに考え、あらゆる手を尽くしました。
私はこのとき、介護業界3年目で、この様な思いの方に出会ったのが初めてでした。ですので、考え尽くしたあらゆる手段を用いた結果、「それでは、帰ります」と言われた時には、介護という仕事の難しさを痛感して、もう辞めようと思ったものでした。
しかし、時が経つ内に、Aさんの思いや行動が、何となくですが、理解出来る様になった気がしたのです。
それは、あらゆる手段で帰宅の思いを誤魔化すのでは無く、Aさんの思いに如何に寄り添うか、という事ではないかと思ったのです。
出身は何処で、何時頃上京して、どんな方と結婚されて、お子さんをどんな思いで育てられて、その時の時代背景はどんな様子だったのか、そして、どんな思いで、今、きみさんちに居るのだろうか。
考える事も大事な事ですが、想像する事はもっと必要な事ではないかとも思いました。
現在もきみさんちには、大きな悩みを抱えられた入居者さんがいらっしゃいますが、その方と、どう向き合って行けば良いのか、Aさんに基本中の基本を教えて頂いた様に思うのです。
ちなみに、Aさんが一緒に撮った桃の花は、その悩み多き入居者さんが住んでいたアパートの庭に咲いています。何か運命的なものを感じてしまいます。
Aさんは、お元気ならば86歳になられます。
今も、どこかで桃の花に負けない素敵な笑顔を浮かべていて欲しいです。

10:57 | Posted by kimisanchi