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【忘れない】  お寺のよこ 光岡

2022年04月30日 | お寺のよこ

入居者のUさんのお話をします。
コロナ禍になる前にUさんと外出をした折上野の藪蕎麦へ食べに行ったことがありました。その際にUさんは大層喜ばれて、その後私の顔を見る度に「よう。どこか旨いものでも食べに行こうよ」と仰るようになりました。しかしコロナ禍となり外食がままならない状況となり、Uさんのご希望には中々沿うことが出来ませんでした。
Uさんは昨年の11月頃から少しずつ召し上がる食事の量が減ってきていて、居眠りも多くなられていました。
その時点ではコロナの感染状況が落ち着きはじめたこと、Uさんの食事量が少なくなっていたこと、それでも外食を希望されていたこと等、諸状況を鑑みて昨年の12月某日、先輩に教えてもらった近隣のお寿司屋さんにUさんと外食をしに出掛けることにしました。
約2年ぶりの外食にUさんは大層喜ばれて、「旨いよ~」と何度も仰りながら、注文された海鮮丼を時間を掛けながらほぼ全量召し上がっておられました。その際にUさんの若い頃のお話、母校のこと、母校のあった場所のこと等を嬉しそうに何度も話をされていたことがとても印象に残っています。
その後年末から一段と食事の召し上がる量が減り、訪問看護ステーションの点滴を受けながらの日々でしたが、身体は衰弱の一途を辿られました。
ある日、スタッフの一人にUさんが身体の痛みや不安な思いを強く訴えられたことがありました。そのスタッフは何をして差し上げられるのか、自問自答をしながら、「Uさんはどうして欲しいですか」と尋ねたところ、Uさんは「忘れないで欲しい」と仰られたそうです。
その数日後の早朝に、Uさんはそのスタッフに看取られて旅立たれました。
お亡くなりになる数日前よりご家族が何度かご来訪されて会話を交わされたことがUさん、ご家族双方にとって心の安らぎになられたのであれば・・・と願っています。

Uさんの思い出は尽きません。それは看取りをしたスタッフをはじめUさんに関わった全ての人(方)がそうなのではないかと思います。
Uさんが確かにここ「お寺のよこ」にいらっしゃったこと、そのことを忘れずにいることでUさんの魂は生き続けます。スタッフにはUさんのことを語り継いでいってもらいたいですし、Uさんのことを見つめ続けたこと、Uさんを支え、また支えられたこと、Uさんのことを忘れずに語り継いでいくこと、そしてそんな仕事に従事していることに誇りを持って欲しいと強く願います。

10:34 | Posted by kimisanchi