2月の末頃、入院されていたNさんが、お寺のよこに戻ってこられました。入院中はずっと点滴生活で、3 週間に渡りほぼ何も口にしていない状態だったため、嚥下能力がかなり低下されていて、ほとんど口も開かず経口摂取出来なくなってしまわれました。それからというもの、Nさんは1日500mlの輸液で命を繋いでいる状態が続き、ご家族と相談し、このまま穏やかに最後を迎えられるようケアに努めていました。
しかし、3月の下旬頃から再びNさんがゼリーなどを少しずつ食べられるようになったのです。Nさんの「まだ生きたい。」という思いが伝わってきました。私は自分が恥ずかしくなりました。Nさん自身がまだ諦めていなかったというのに、勝手に私のほうが諦めていたからです。入居者さんの意思を丁寧に確認していくことが、この仕事では大切です。「生きたい」というある意味最も根源的な人の意思は何よりも尊重すべきです。私はもう最後まで諦めません。Nさんからとても大切なことを教わったのですから。