こんにちは。どっこいしょを書くのは5回目になりました。2012年4月入社ですので、2年と少し。まだまだ、経験不足です。介護の経験自体もですが、なにより人の生死の境に立つことそのものが、今まで数多くあったわけではないのだと、あらためて感じています。
私の担当であった、Kさんのお話です。Kさんははきはきとした、江戸っ子口調と言うのでしょうか、びしっと話される方でした。お寿司などの美味しいものが好きで、コーヒーを好んで飲んでいました。入浴にあまり積極的ではなく「一番風呂が沸きましたよ」と言うと「よかったね、入んないけど」。またあるときは「今日は汗、たくさんかいてますね」に「そうね、でも別にいいわ」。最後は「あせもができたっていいよ」とばっさり。お医者さんが、お風呂はお肌のためにいいんだって、と話して、やっと「そう?なら入ろうかな」。私はお医者様に勝てないのだろうか……と打ちひしがれ、周りの先輩に相談したのもいい思い出です。
そんなKさんは4月下旬、好きなお寿司でさえも食べてはむせ、咳き込んでは吐き出すようになり始めたために食事量が減り、他、体調や栄養状態も考え、入院されました。お見舞いに行ったときは「Kさんのこと、帰って来るの待ってるよ」と話し掛けると笑顔になり、「うん」と返事が聞けました。そうして、ご本人の意向と体調の推移を踏まえ、5月頭に退院されました。酸素の機械を必要としながらも、とろみをつけたポカリスウェットやコーヒーゼリー、ティラミスなどを少量ですが食べ、ブドウゼリーにははっきりと「おいしい」と話していました。退院して数日、私が夜勤に入った日、手を握ればしっかりとした強さで握り返し、話し掛けに対してこちらに顔と目を向ける素振りが見られました。夜間帯もそれほど苦しげではなく、次の日を迎えました。夜勤終わりの朝9時過ぎに「Kさんおはよう、また来るね」と話し掛け、私は帰路に就きました。それから約4時間後、13時に連絡がありました。最期は苦しそうな様子なく、息を引き取ったとのことを。その瞬間には立ち会っていませんが、最後の夜を一緒に過ごしたのは私だったのだな、となんとなく思いました。生活を過ごす間に、笑い合ったり喧嘩したり、学ばせて頂いたり。貴重な時間でした。慣れるものではないと聞きましたが、思い返し、悼む時間を持つ、それに慣れる必要はないのかとも思いました。
Kさんのご冥福を心からお祈りします。