きみさんちでは入居者さんはそれぞれ思い思いに家事をなさっていますが、背負ってきた人生が違う分、おのおののやり方が違います。茶碗を洗うなら、一つ一つ食器を洗ってはゆすぐか、全て洗ってから一度にゆすぐか。服も洋服たたみをするか、袖たたみにするか。たとえば、ナスの味噌炒めなら輪切りにするか、乱切りにするか、短冊に切るか。それぞれご本人としては当たり前のことなので、自分こそがスタンダードなやり方だと思ってらっしゃるわけですが、そこは亀の甲より年の功。「あら、あなた、そんなことするの?」「へぇ~、勉強になったわ」と、やんわりと違和感を主張するわけです。
傍で見ている私もそれぞれのやり方、しぐさが興味深く『この切り方だとナスが油を吸って柔らかいからお好きなのかな?』などと想像しながら楽しんでいます。たいていはこちらの想像の範囲内での違いなのですが、中には驚くものものあります。私がきみさんちに入った頃は、洗濯物は洗いあがって濡れたものを一度、全て畳んでから干していました。なんでも、しわにならないからとか。ベランダの洗濯機から濡れた重い洗濯物を居間に持って来て、真剣な形相で畳んだと思ったら、またベランダにそれを干しにいく。かなりの手間なのですが、さもみなが当然のこととしてやっていました。また、秋になると思い出すのが、男性のKさん。秋刀魚を焼くとき、目を菜箸でくり貫き、魚体全体を折り曲げて、そこに尾を通して輪っか状にするのです。見た目は正に秋刀魚のドーナツなのですが、Kさんいわく、こうして焼くと食べるとき身離れが良くなるからだとか。確か宮城県にいらしたことがあったと思いますが、秋刀魚の有名どころならではなのでしょうか?
さて、若い入居者さんのNさんが階段をモップで掃いていたのですが、右端から真ん中まで掃き、今度は左端から真ん中まで掃き。最後に真ん中に集めたゴミを下段に掃き降ろす。なかなかの拘りっぷりですが、なんだか酷くデジャブーを感じました。そしてふと気が付きました。学校の掃除の時間にこの方法を習った覚えがあります。実はNさんと私は同世代。もしかして、これは同世代ならではなのでしょうか?
人は十人十色、家事も十人十色ですね。